2009年6月11日木曜日

エコツーリズム調査報告その2

ふっと、

気がつけば、意外と知られていない事もあるみたいです。


前に報告したエコツーリズムについての調査に続き、今回も少し気になった部分について報告します。質問の最後の項目で「旅行業もしくは観光業と、エコツアーについての違いは何かと思われますか?(ご存知の範囲、推測でも結構ですのでお答え下さい)」というものがありました。この項目について考察します。

この質問に対する回答について:
旅行業に対する考えとエコツアーに対する考えの違いについてさまざまな意見がみられました。右上段のグラフは観光業について、下段はエコツアーについてのイメージや、エコツアーとは何かについてをいくつかのカテゴリーに分けたものです。
観光業についてはダントツで
  • Profitability(利益主義)
  • Use of pre-existing feature(テーマパークなど、人為的に作られた環境)
  • Passive experience(受動的な体験)
といった考え、イメージがあるようです。
エコツアーでは、多様な意見がみられますがその中でも
  • Natural conservation(環境保護)
  • Low impact travel(環境に優しい旅行)
  • More responsibility(より大きな責任)
  • More active, hands on(よりアクティブ、直接体験、体験のユニークさ等)
  • Nature based(自然の環境下で)
といった意見が多く、やはり「エコ」が示すように自然に関わりのあるツアーであるとの認識がされているようです。しかし、多くの回答者が推測、イメージで回答しており、しっかりとした定義が認識されておらず、一般的に浸透しているとは言い難いのが現状のようです。

それでは、エコツーリズムとはいったいどんな風に定義されているのか見てみましょう。80年代後半からエコツアーの必要性は議論され、90年代前半にいくつかしっかりとした定義が見られ始めました。1993年にCeballos-Lascurainにより、「*1エコツーリズムとは環境を考慮しつつ、手つかずの自然や過去から現在に至るいかなる文化の形態を、楽しみ、学び、認識し、(その体験により)環境保護を促進し、旅行者による影響を最小限にし、且つその地域住民の社会的、経済的参画をもたらすもの」(Ceballos-Lascurain 1993) と提言し、その3年前の1990年には現在のThe International Ecotourism Society(TIES)が設立されたりしています。そのTIESによるエコツーリズムの理念としては、
  • Minimize impact.(影響の最小限化)
  • Build environmental and cultural awareness and respect.(自然環境、文化への認識、畏敬の念の確立)
  • Provide positive experiences for both visitors and hosts.(旅行者また受け入れる側、双方へのより良い経験の供給)
  • Provide direct financial benefits for conservation.(自然保護への直接的な金銭供給)
  • Provide financial benefits and empowerment for local people.(地域住民への経済、労働機会の供給)
  • Raise sensitivity to host countries' political, environmental, and social climate.(受け入れ国の政治、環境、社会情勢に対する訪問者の配慮の向上)          (TIES 1990-2009)
を挙げています。これらの事を総括すると、エコツアーは自然環境のみならず、文化、経済そして社会、これら全てを同等に配慮した「旅」の形態と言えます。エコ、エコと自然保護が大前提で地元住民の経済状況を無視したプログラムなどはこのエコツアーの定義からは外れ、またその逆の経済効果偏重のプログラムもまた除外されます。しかし現実はさまざまなプログラムが「エコツアー」の名を借りて行われているようです。
今回のアンケートの回答の一つをここで紹介させてもらいますが、

「(エコツアーの共通認識の不十分による)状況で、言葉の持つよいイメージだけを借りた質の低いツアーが提供されるような事態が万が一続くと、旅行者の信頼を損ね、いずれはエコツアー全般が一過性のブームで終わる結果になってしまう危険性があるのではないかと危惧しています」

との指摘がありました。まさにその通りだと思います。認識度の低い現状況では、選ぶ側一人ひとりの予備知識が責任あるプログラム、また、エコツーリズムの共通認識を創り上げていくものであり、Nobu自身もまた、しっかりとした、正しい情報を多くの人と共有する責任を感じています。

参考文献:Ceballos-Lascurain (1993). Definitions and Principles of Ecotourism. Retrieved from Mount Royal College ETOL 2401 Blackboard Web Site: http://courseware.mymrc.ca/webapps/portal/frameset.jsp?tab_id=_2_1&url=%2fwebapps%2fblackboard%2fexecute%2flauncher%3ftype%3dCourse%26id%3d_70817_1%26url%3d.

TIES (1990-2009). What's Ecotourism?. Retrieved June 10th 2009 from http://www.ecotourism.org/site/c.orLQKXPCLmF/b.4835303/k.C64B/What_is_Ecotourism.htm.

*1 原文: Ecotourism is environmentally responsible travel and visitation to relatively undisturbed natural areas, in order to enjoy, study and appreciate nature (an any accompanying cultural features – both past and present), that promotes conservation, has low visitor impact, and provides for beneficially active socio- economic involvement of local populations.

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